自分のPNHの症状を知りましょう
PNHの症状は、患者さんによってさまざまです。自覚する症状がまったくなかったり、予期せずあらわれる場合もあります。
また、PNHでは慢性的に溶血が起こっているため、その症状が時間の経過とともに変化することもあります。自分の症状の変化を見逃さないようにしましょう。
PNHであらわれる主な自覚症状と合併症
PNHでは、さまざまな自覚症状や重大な合併症が起こる可能性があります。溶血発作※1が起こる時期、起こる頻度、重症度が予想できないうえ、さまざまな症状が日常生活にも影響を及ぼします。
例えるならPNHであらわれる自覚症状は氷山の一角のようなものです。見えないところで病状が進行していたり、重い合併症が潜んでいるかもしれません。
※1 溶血発作
肉眼的ヘモグロビン尿を認める状態を指します。
PNHであらわれる主な自覚症状
- 疲労
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- 疲れやすい
- 日常活動が困難
- 集中力がない
- めまいがする
- 脱力感
- 痛み
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- 腹痛がある
- 足の痛みやはれ、むくみ
- 胸が痛い
- 背中が痛い、腰痛
- その他の症状
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- 茶褐色(コーラ様)の尿
- 息切れ
- 物を飲み込みづらい(嚥下困難)
- 皮膚や眼が黄色っぽい(黄疸)
- 男性機能不全
自覚症状にはあらわれにくい症状や合併症
- 腎臓病
- 血栓
- 臓器の障害
- 脳卒中
- 心臓発作
溶血による合併症とは
PNHの溶血は、自覚する症状がある、ないにかかわらず起こっています。溶血によって赤血球の中にあるヘモグロビン※2などが血液中に流れ出て、次のような合併症を発症することがあります。
※2 ヘモグロビン(Hb, hemoglobin)
赤血球内にある赤褐色のタンパクです。全身に酸素を運びます。赤血球の外に出ると有害物となり、からだに重大な悪影響を引き起こすことがあります。
肺の障害
PNH患者さんの約2分の1は肺高血圧症を合併しています(海外データ)1)。肺高血圧症は、溶血による一酸化窒素の減少が原因と考えられており、息切れや呼吸困難感などの症状を引き起こします。
腎臓の障害
急性または慢性の腎障害にかかることがあります。
血栓症
血管の中で固まった血液(血栓)が、静脈や動脈をふさぐことで、心臓発作や脳卒中、臓器障害などを起こすことがあります。
PNHによる血栓の特徴
- いつ起こるかわかりません。
- すべてのPNH患者さんに起こる可能性があります。
- 初めて起こった血栓症でも重い症状を起こすことがあります。
血栓についての詳細は担当医師にご相談ください。
疲労
溶血により赤血球が破壊されると、ヘモグロビンが不足してしまい、十分な酸素を全身へ運べなくなってしまいます。このため、以前は普通だった日常活動がつらくなるほど、脱力感や疲労感を感じることがあります。
PNHによる疲労の原因
PNHによる疲労の原因には、次の2つが考えられます。
PNHの溶血そのものが原因の場合と、溶血による貧血が原因の場合です。PNH患者さんが感じている疲労は、溶血そのものが原因の場合がほとんどです。疲労は、ヘモグロビン値で測定した貧血の程度よりも強く感じられていることがあります。
PNHのほかに再生不良性貧血(AA)や骨髄異形成症候群(MDS)がある場合は、AAやMDSが貧血の原因である可能性があります。PNHとは違って、AAやMDSによる貧血は赤血球が骨髄で十分つくられないために起こります。このような場合は、PNHの治療に加えてAAやMDSの治療も行われます。
気分が悪いときだけ、PNH は悪化しているのでしょうか?
いいえ、違います。PNHでは、からだの中でさまざまな変化が起こっていても、症状や気分にあらわれないときがあります。日々の体調に少しでも変化を感じたら、記録に残して診察時に担当医師に話し、適切な治療をしてもらいましょう。
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- 1)Hill A, et al. Br J Haematol . 2010;149(3):414-425.
【監修】大阪大学大学院 医学系研究科 血液・腫瘍内科学招聘教授 西村 純一 先生
作成年月:2024年4月