PNH関連用語集
1 クローンサイズ:
全血球に対するPNH型血球(PNHの原因となる異常な血球)の割合を指します。診療では主に赤血球や顆粒球(白血球の1つ)のクローンサイズを検査します。「クローンサイズが大きい=PNH血球の割合が高い」ということですが、クローンサイズが小さくても、PNHによる健康上の問題が生じることがあります。2 血球:
血液中の細胞を指します。赤血球やさまざまな種類の白血球が含まれます。3 血栓:
体内の血液が固まったものです。切り傷など外傷を負った場合には、血液が固まり出血を止めることは、健康なからだを維持するために重要です。しかし、時として固まった血液が静脈や動脈の血流を遮断してしまうことがあります。4 後天性:
後天性とは、生まれた後でさまざまな原因で持つこととなってしまった病気や障害の性質のことです。PNHは遺伝子の突然変異で起こる病気ですが、生まれつきのもの(先天性)ではなく、遺伝することはありません。5 骨髄:
太い骨の内側にある組織です。骨髄では血液中にある赤血球、白血球、血小板などがつくられます。6 骨髄異形成症候群(MDS, myelodysplastic syndromes):
骨髄機能の異常によって、正常な造血が行えなくなり、一人前の細胞になる途中で血液細胞が壊れてしまう無効造血が起こります。国際的な研究では、PNH患者さんの5.8%でMDSが認められると報告されています1)。7 骨髄機能不全疾患:
骨髄で血球がつくれなくなったり、つくる量が減少する病気の総称です。再生不良性貧血(AA)と骨髄異形成症候群(MDS)は骨髄機能不全疾患です。8 再生不良性貧血(AA, aplastic anemia):
“再生不良性”とは、骨髄が新しい血球を必要なだけつくれないことを意味します。再生不良性貧血では赤血球、白血球、血小板が減少します。9 赤血球:
血液中の細胞の1つです。全身に酸素を運び、また、体内で発生した二酸化炭素を取り除くはたらきがあります。PNHでは、補体制御タンパクが欠けている赤血球(PNH型赤血球)が、補体の攻撃により破壊されやすくなります。10 乳酸脱水素酵素(LDH, lactate dehydrogenase):
赤血球を含む細胞内にある酵素です。溶血によって血液中に放出されるため、血液検査でLDH値を測定すれば溶血の程度がわかります。PNHをよりよくコントロールするために、定期的にLDH値を測定し、把握することが大切です。11 肺高血圧症:
肺に血液を送る動脈の血圧が高い病気のことです。血液が肺に到達しにくくなり、心臓の動きが悪くなります。12 貧血:
赤血球中のヘモグロビン(酸素を運ぶタンパク)の量が少ない状態です。それによって、脱力感や疲労感を感じることがあります。13 ヘモグロビン(Hb, hemoglobin):
赤血球内にある赤褐色のタンパクです。全身に酸素を運びます。赤血球の外に出ると有害物となり、からだに重大な悪影響を引き起こすことがあります。14 ヘモグロビン尿:
ヘモグロビンが存在する尿のことです。ヘモグロビンは赤褐色なので、尿の色が濃く、時に“コーラ色”になります。ヘモグロビン尿による尿の色の変化(肉眼的ヘモグロビン尿)はPNHの重症度の診断にも用いられます(→「PNHの重症度」参照)。PNH患者さんの約3分の1で、診断時にヘモグロビン尿が認められます2)。
15 発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH, paroxysmal nocturnal hemoglobinuria):
補体制御タンパクをもたない赤血球を含む血液細胞がつくられる病気です。赤血球が補体の攻撃によって破壊され(溶血)、重大な健康上の問題を引き起こすことがあります。主な症状には、腹痛、嚥下困難、貧血、息切れ、疲れなどがあります。重大な合併症には、血栓症、腎不全、臓器障害があります。16 溶血:
赤血球が破壊されることをいいます。溶血はPNHの重大な健康上の問題の主な原因です。
1)Schrezenmeier H, et al. Haematologica. 2014;99(5):922-929.
2)Nishimura J, et al. Medicine (Baltimore). 2004;83(3):193-207.